【Vision2-2】

 

 次の対戦の為、私たちは再び町に移動する。

「次どんな相手だろうね」

「ああ、一応決まってるけど情報見る?」

「んー、そうね。見ておこうかな」

「!」

「えっ何?」

ヴィンテージは私を抱えて駆け出す。次の瞬間、私が立っていたところに来る大きな衝撃。真上から何かが降って来たことは分かったが、確認する暇もなくヴィンテージがその何かに足技を繰り出す。バチンと激しい音がして、次の衝撃が襲ってくる。目を開けると、彼は私を庇ってその何かに思いっきり殴られていた。

「ヴィンテージ!」

勢いを殺せず、ヴィンテージは私を抱えたまま地面に転がる。私が怪我をしないようにしながら。ヴィンテージの機体がピーピーと警告音を鳴らしている。襲来したモノは彼が立ち上がろうとする後ろで更に攻撃を加えようとする。いけない、このままじゃヴィンテージが壊れちゃう。私はとっさに後ろに落ちていた何かを掴んだ。バールのようなパイプのような鉄の棒だった。落ちてくる何かに向けて、私は思い切り棒を突き上げる。向こうはそれに気付いて、ギリギリのところで棒をかわし大きく後ろへ空転する。止まっていた息を整える私。やっと立ち上がろうとするヴィンテージ。それから、やっと認識出来たその何か――それはアンドロイドだった。

「”虫も殺せないような顔”してると思ってたんだがそうでもないらしいな!」

砂埃の向こうで彼は高々と嗤う。男性型……設定年齢は青年か成年だろう。マスターはまだ見当たらない。埃が落ち着いていく。現れたのは――ヴィンテージにそっくりなヴィジョンだった。

「……」

パーツが共通していれば似ることもある。ヴィンテージはそう言っていた。でも私の目の前に現れたのはヴィンテージそのものだった。同じ機体、同じ服、同じ声の別のアンドロイド。これは――。

「貴方、ヴァイオレットね」

「あん? 初めましてのはずだが?」

「ええ、そうよ。でもちょっとだけ知ってるの」

「そりゃ嬉しいね。ご機嫌麗しゅう? お嬢さん。唐突だがマスター権限を放棄してくれないかな? それか次のトーナメントで負けて、負けて負けて負け続けて欲しいんだが。それだと時間食い過ぎるから今ちゃっちゃと捨ててくれると助かる」

「突然そんなこと言われてそうですか分かりました、なんて言うと思う?」

「言わねえよな」

「貴方のマスターはどこ?」

「聞くなよ。聞かれても答えないんだけどさ?」

「……突然現れたと思ったら何をべらべらと」

「ヴィンテージだめよ。まだ動いちゃ」

「この野郎お前を殺そうとしやがった……許さねえ。ぶっ壊す」

「おぉ。俺の奇襲に負けた高スペックが何か言ってらあ」

「こいつ……」

私はヴィンテージの前に出て、ヴァイオレットから隠すような姿勢を取る。

「ヴィジョン相手じゃ太刀打ち出来ねえ! 頼むから引っ込め!」

「攻撃対象を私にしたのはヴィンテージを確実に仕留める為でしょう?」

「鋭いな。何で分かった?」

「私を殺すならもう叶ってるはずだもの。わざわざ会話をしているってことは失敗したのよ」

「へ。曲がりなりにも”スカーレット”だな。根っこは同じか」

ああ、やっぱり。私はクローンなんだ。

「貴方のスカーレットはどこ? 貴方のマスターでしょ?」

「知らねえよ」

「そんなはずないわ」

「答えねえっつってんの。とりあえずそこの虫潰していい? ムカつくんだよなソイツ」

彼は顎でくいっとヴィンテージを指す。

「嫌に決まってるでしょう」

「あっそう。やっぱお前も殺すか?」

「俺のマスターに手を出すな」

「口だけじゃなくてかかってくればぁ!?」

ヴァイオレットはもう一度私たちに向かってくる。私はパイプを捨てヴィンテージに渡された護身用のナイフで、自分の首を狙った。

「!」

ヴァイオレットは――私のナイフを腕ごとがっちりと掴んで動かないようにしていた。

「どういう……」

ヴィンテージは混乱している。

「狙ってるのは私の命じゃない。幻影使いとしての権限を捨てさせる方が目的ね? 何の為?」

「……」

「答えて、ヴァイオレット」

「……ち、その文句まで同じかよ。やりにくい」

彼は私からナイフをもぎ取り、遠くへ放り投げる。

「奇襲は失敗。最悪だがこのまま帰るしかねえみてえだな。じゃあな」

彼は思いっきり地面を蹴ると、目にも留まらぬ速さで去っていく。

「待て!」

「駄目ヴィンテージ! 追わないで!」

「今あいつを逃したら手がかりが消える!」

「多分また接触してくると思う。それより貴方の修理が先。分かった?」

「……承知した、マスター」

「ありがとう、言うこと聞いてくれて」

私はヴィンテージを抱きしめる。彼は殴られた衝撃でヘルメットに大きくひびが入っていた。見ていて痛々しい。

「拠点に戻ろう」

ヴィンテージの修理の為、私たちは来た道を引き返した。

 

fin.