【Vision1-2】

 

 ヴィンテージと共に拠点を出る。出て最初に驚いたのは、道らしい道がないことだった。

「これどうやって降りるの!?」

私の拠点は小さな小さな岩山のその頂上にあって、周りはほぼ崖という状態だった。これ、一人で帰って来れないんじゃ?

「あ? 移動手段としての俺がいるだろ?」

「え、えっとおんぶしてくれるの?」

「そう」

「そう、って」

「俺じゃ不満?」

「不満じゃないけど、不安です」

「=ユーザーの感情の発露を感知。不安感。ユーザーへ提案=」

「え、なに。いきなりガイド音声みたいな声出して」

「背負うのとお姫様抱っこ、もしくは手を繋いでの崖からの大ジャンプどれがいい?」

「そそその三択しかないの!?」

「=ユーザーの発言から別の移動手段を検索します=」

「いや、おんぶで! おんぶでいいです!」

「=受理されました=」

ヴィンテージはひょいと私を抱えると、軽い動作で岩山を降りて行く。揺れは少なく、思ったより楽だった。ふわりと地面に降ろしてもらう。

「これおんぶって言わない……」

「降りれたろ? 乗り心地はどう?」

「……悪くなかったです」

「=ユーザーの状態、良好。以降のデータに反映します=」

「ねえ、そのガイド音声ちょっと怖い」

「え? あ、そう。じゃ全部口語にする」

「うん、お願いします」

またいいタイミングで、ピピッと端末が鳴る。

「今度は何だろ?」

「新入りが早々に敗退してトーナメントが終了した」

「え、じゃあ不戦勝?」

「そういうことだな」

「どうして? トーナメントってこんな早くに終わっちゃうものなの?」

「トーナメントは基本、区画を移動した新入りに対して行われる。1区画20人の上位8位にそいつが進まなければトーナメントの意味がなくなるんだよ。そんな弱っちいならここにいる意味はありませんってな」

「へー、結構厳しいのね。敗退したらどうなるの?」

「ヒューマンはユーザー資格を剥奪される。ヴィジョンは廃棄される」

「シビアすぎない!?」

「俺たちはユーザーそれぞれに対してカスタマイズされてるから、使い回しは効かないんだよ。だからすぐ廃棄される。ま、部品はまた使われるからリサイクルってやつ?」

「カスタマイズ……。ヴィンテージも私用にカスタマイズされてるの?」

「そうだけど?」

「……どの辺が?」

「どの辺って、俺の全部がだけど」

じっと彼を眺めてみる。身長177、8cmくらいの男の子の体型が私用ってこと? それともその砕けた態度が?

「うーん?」

「ヴィジョンによって得意なことが違うって、さっき映像で見ただろ? 俺はヒューマンに限りなく近い機体動作に意味があるの。ワカッタ?」

「分かんないです……」

「よーし! 俺のプロモーションすればいいんだな!? 見てな!?」

彼は私を指差し宣言すると、その場でいろんなバランスを取り始めた。片足で立ったり、片足のままジャンプしてみたりしゃがんでみたり。逆立ちしたり、逆立ちを片腕で支えてみたり。おお、と感嘆し私は拍手をした。

「すごーい」

彼はふふんと胸を張った。

「俺ぐらい滑らかに重心移動が出来る機体はそうそうないぜ」

「そっか。これはヴィンテージにしか出来ないのね」

「そうそう。それから俺は卵を割らずに持てるし、ヒューマンと同じ力加減で卵を割ることが出来る」

「それ、ってすごいこと?」

「大概の機体はそこまで調整されてないから、出力加減が分からずに卵がグチャ! ってなもんよ」

「繊細な作業も出来るのね」

「そう!」

彼はもう一度胸を張った。ヘルメット頭が可愛く見えてきたかもしれない。

「俺たちは常に各ユーザーのサポートを円滑に行う為に調整されてる。使いこなせるかはユーザー次第だけどな」

「サポート……」

その言葉で、私は考える。私の行動、能力。出来ることってなんだろう?

「私に出来ることを、私自身が知らないのに。変な話」

「俺は知ってる」

「やっぱり知ってるんじゃない! 教えてよ!?」

「機密事項です」

「いじわるー!」

「知りたきゃこれから頑張って生活するんだな~」

彼は頭の後ろで手を組んでそんなことを言うのだった。ケチー! と私は叫んだ。

 

fin.